ブレヒトmeets小津安二郎

ブレヒトmeets小津安二郎

ボーイミーツガールではない。ボーイミーツボーイでもない。おじさんミーツおじさん、である。それも演劇のおっさんと、映画のおっさんである。ただのおっさんではなく、巨匠である。なぜこんなしょうもない言葉遊びをしているかというと、なんば青年のせいである。先日、今回の「ワクラバ」の監督、なんば青年と「ワクラバ」完パケの祝杯をあげながら話をしていると、今回の映画は一言で言えば「ブレヒトmeets小津安二郎なんだよね」などとわけのわからんことを言い出したからである。

わけはわからないがかっこいい。そういうことが人生にはある。なぜか俺は今、ハードボイルド調にこの文章を書いている。「俺」という一人称を使って文章で書く。それだけでハードボイルドだ。この一連も「わけがわからんがかっこいい」ということの一つだ。そんなことはどうでもいい、ブレヒトと小津安二郎の話をしているのだ。
この二人のおじさん、知らない人のために説明しておくと、ブレヒトは演劇のおっさんであり、小津安二郎は映画のおっさんである。以上。
俺もよく知らないのだ。ブレヒトの演劇を観たこともなければ、小津安二郎の映画をちゃんと観た記憶がない。だから実感を持って二人を語ることができない。付け焼き刃の知識を披瀝するなら、ブレヒトは演劇で「異化効果」という方法論で舞台からカタルシスを排除した。異化効果とは、、カタルシス、、とは、一言でいうと、映画や演劇を観終わったあとに「最高――!!!やっほーーーー!」と感じさせないように演劇を作る、ということである。(らしい)。アホである。観客を楽しませろ、とミーハーでパンピーな俺は思うのだけど、どうやら演劇の天才はそう思わなかったらしい。小津安二郎は日本人の日常会話を描くことが天才的にうまい監督らしい。演劇の本を読んでいても小津安二郎の名前があちこちに出てくる。日本語を使って物語を紡ぐことが得意だったらしい。私が知識として知っているのはこれくらいだ。全部、なんば青年の受け売りである。なんば青年はとにかく頭がよく、たくさん演劇や映画を観ている。そんな彼が「ブレヒトmeets小津安二郎」だのと頭でっかちのこと言っているので、俺は「天才!」と神輿を担いでいるのだ。
「ブレヒトmeets小津安二郎」とは、つまり「映画最高――!!!」とならずに、上手に日常会話を使って物語を紡ぐということ、なのだろうか。なんば青年がこれを読んで「全然違うわ」と言うかもしれないが、その時はハードボイルドらしく沈黙を決め込めばいい。

というわけで、おっさんとおっさんが出会った映画、「ワクラバ」がついに明日渋谷で上映される。おっさんとおっさんの出会いに興味がない人はどうしようか。命を削ってハードボイルドに作られたこの作品の熱量を楽しんでくれたらと思う。
この映画は「夢追うことのダサさと恥ずかしさ」というのがテーマだと思っている。夢を追いかけるために地元を去り東京へ行く、というプロットは俺や、他の多くの東京に来る人達に共通することではないだろうか。地元でもてはやされたり、もしくは馬鹿にされたりしている俺らは東京に来て、東京での忙しい生活に追われて自分自身が喧騒に埋まってしまう。こなすだけの生活なのに「夢を追いかけててかっこいいね」なんていう薄っぺらい言葉に「そうだろ?」なんて思う人の方が少ないだろう。有名なサクセスした人たちの昔の「下積み時代」が美化されて、テレビで時たま語られることがあるが、俺はあんな風に自分の過去を美化したりしたくない。俺は今、非常にダサい時間を生きている。ただ、それを美しいと思いたいのだ。完全にブルーハーツである。リンダリンダのドブネズミである。
これは夢を追いかけることのダサさと恥ずかしさを表現した物語だ。その物語をブレヒトmeets小津安二郎でやる。面白くないわけがない。自分の作品を面白いとドヤ顔で宣伝しているやつのことを俺を信用しない。だから俺は俺を信用していない。だからこれを読んでるやつも俺を信用しないほうがいい。とにかく、映画に来て「クソ、おもんなかった」と言いに来てほしい。俺は笑顔で「くそダセえよな」と答える。それでさよならだ。

以下、映画の詳細

タイトル:『ワクラバ』

《あらすじ》
ミュージシャンを目指して上京した佐藤翔は、父の死をきっかけに田舎町に帰郷することになった。
朝、電車を降りた翔は、スーツケース片手に地元を歩く。偶然、海で知り合いに出会ったことをきっかけに、地元に住む4人を訪ね歩く。
地元に帰省した1日の再会の記録。

監督:難波弘二
原案:岡部健太
構成:難波弘二
出演:仁田直人、ジョニーアラタ、鈴木睦海、卯ノ原圭吾、米川幸リオン、石山優太
撮影:滝梓
録音:中山直紀
演出部:岡部健太、芝裕起
制作:高木健吾、吉田知生
整音:塚本啓介
製作:伯楽 -hakuraku-
製作協力:一般社団法人SUMICA
主題歌:『ジャカジャン』(作詞/作曲:ジョニーアラタ)

2019年|日本|カラー|16:9|デジタル|87分

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映画美学校映画祭2019
(プログラム内にて『ワクラバ』上映あり〼)

日時:2019/12/21 (土) 14:00〜15:30
会場 : 〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F 映画美学校試写室(ユーロスペース下)
料金:前売り500円/当日600円